受け取り方 最適化シミュレーター
この診断が使っている式
税制辞書バージョン 2026-08 版。制度が変わったときに触るのは lib/tax.ts だけで済むように、税率と控除はすべて1か所にまとめています。
1. 一時金で受け取ると「退職所得」になる
iDeCo・企業型DCの老齢給付金を一時金で受け取ると、税法上は退職手当等として扱われ、 退職所得控除が使えます。控除額は勤続年数(iDeCoの場合は掛金を拠出した年数)で決まります。 1年未満の端数は切り上げです。
勤続20年以下: 40万円 × 年数 (最低80万円) 勤続20年超 : 800万円 + 70万円 × (年数 − 20) 課税退職所得 = (収入金額 − 退職所得控除額) × 1/2
退職所得は他の所得と合算しない分離課税です。だから同じ金額でも、給与や年金として 受け取るより税率が上がりにくく、社会保険料の算定にも入りません。
2. 退職金と受け取る年が近いと、控除を食い合う
勤務先の退職金とiDeCoの一時金は、どちらも「退職手当等」です。勤続期間が重なっていると、 後から受け取るほうの退職所得控除から、重なった年数ぶんの控除額が差し引かれます (所得税法施行令70条)。重複期間の1年未満は切り捨てです。
後から受け取るほうの控除額 = 40万円 × 勤続年数(または800万円 + 70万円 × …) − 40万円 × 重複年数(または800万円 + 70万円 × …)
何年空ければ調整されないかは、受け取る順番で違います。
iDeCo一時金 が先 → 退職金 が後 2026年1月1日以後に支払われる退職手当等: 前年以前9年内 (= 10年空ける) 2025年12月31日までに支払われた退職手当等: 前年以前4年内 (= 5年空ける) 退職金 が先 → iDeCo一時金 が後 前年以前19年内 (= 20年空ける)
令和7年度税制改正で、前者が「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に広がりました。 これまで定番だった「60歳でiDeCoを一時金 → 65歳で退職金」という5年ずらしは、 2026年以後に退職金を受け取るなら調整の対象に入ります。この診断は、退職金を受け取る年が 2026年以後かどうかで窓を切り替えています。
なお、先に受け取ったほうの金額がその控除枠を使い切っていない場合は、金額から逆算した年数 (800万円以下なら 収入 ÷ 40万円、800万円超なら 20 + (収入 − 800万円) ÷ 70万円、いずれも切り捨て) だけを「前の勤続期間」とみなして重複を測ります。この診断もその調整を入れています。
3. 年金で受け取ると「公的年金等の雑所得」になる
分割で受け取ると公的年金等控除の対象になり、公的年金と合算して雑所得として課税されます。 65歳を境に最低保障額が変わります。
65歳未満: 収入 130万円以下 → 控除 60万円 65歳以上: 収入 330万円以下 → 控除 110万円 以降は共通(公的年金等以外の合計所得1,000万円以下の場合) 410万円以下 : 収入 × 25% + 27.5万円 770万円以下 : 収入 × 15% + 68.5万円 1,000万円以下: 収入 × 5% + 145.5万円 1,000万円超 : 195.5万円
雑所得は総合課税なので、他の所得と合算した上で超過累進税率がかかります。この診断では 基礎控除 580,000円(住民税 430,000円)と社会保険料控除を引いた額に、 下の税率表と住民税 10% をかけています。
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 上限なし | 45% | 4,796,000円 |
所得税額にはさらに復興特別所得税(2.1%)を上乗せしています。基礎控除は令和9年分以降の 恒久ベース(58万円)を使っています。令和7年・8年分には所得に応じた上乗せがあるため、 その2年に受け取る場合は実際の負担がここより軽くなることがあります。
4. 年金にすると社会保険料まで動く
一時金は分離課税なので、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の算定所得には入りません。 いっぽう年金で受け取ると総所得に入るため、保険料が上がります。ここを見落とすと 「税金だけ見れば年金のほうが得だったのに、手取りは減った」ということが起こります。
保険料(概算) = (総所得 − 430,000円) × 10%
+ 均等割 50,000円 (上限 1,060,000円)料率も均等割も自治体でまったく違います。この診断は絶対額を当てにいくものではなく、 「受け取り方を変えたときにどちらへ何円動くか」を見るために、代表値を1つ置いています。 均等割は全パターンで共通なので、比較の結果には影響しません。
5. 何を総当たりしているか
受給開始年齢60〜75歳 × 一時金の比率0〜100%(10%刻み) × 年金の分割年数5/10/20年 を すべて計算し、次の合計がいちばん小さい組み合わせを「最適」としています。
総負担 = iDeCo一時金にかかる税(所得税 + 住民税)
+ 勤務先の退職金にかかる税(所得税 + 住民税)
+ 年金受取で増える 所得税 + 住民税 + 国保等保険料公的年金そのものにかかる税はどの受け取り方でも同じなので、比較から外して 「iDeCoを年金で受け取ったことで増えたぶん」だけを積んでいます。
6. この診断が見ていないこと
- 受給開始年齢を変えても残高は同じものとして扱っています。実際には受給を遅らせるあいだも 運用は続くので、遅らせるほど残高が増える(あるいは減る)可能性があります。
- 受給を始めた時点で掛金の拠出は終わるものとして加入年数を短くしていますが、 そのぶんの掛金と運用益は残高から差し引いていません。
- 年金で受け取るときの給付事務手数料(1回あたり数百円)、運営管理機関ごとの受け取り方の 制約(併用の可否・分割回数)は入っていません。ここは必ず加入先に確認してください。
- 勤続5年以下の役員等に対する2分の1課税の不適用、短期退職手当等の特例、 障害給付金・死亡一時金としての受け取りは対象外です。
- iDeCoを60歳から受け取るには通算加入者等期間が10年以上必要です。足りない場合は 受給開始可能年齢が繰り下がります。
- 退職金の受給年は入力どおり固定しています。実務では就業規則や再雇用の設計で 動かせることがあり、そこが最大の打ち手になる場合があります。
7. 出典
- 所得税法30条 / 国税庁 タックスアンサー No.1420(退職金を受け取ったとき)
- 所得税法施行令70条(退職所得控除額の計算の特例 — 重複期間の調整)
- 令和7年度税制改正(確定拠出年金の老齢一時金を先に受け取った場合の調整期間を 4年内から9年内へ。2026年1月1日以後に支払われる退職手当等に適用)
- 所得税法35条 / 国税庁 タックスアンサー No.1600(公的年金等の課税関係)
- 令和7年度税制改正(基礎控除の見直し。令和9年分以降は58万円)